側湾症の難しさについて。70代女性

腰痛/70代女性/側弯症の既往あり
主訴は、慢性的な腰の重さと痛みでした。
長時間立っているときや歩行時に痛みが強く、座っていてもだるさが抜けにくいとのことでした。
胸椎から腰椎にかけての側弯が見られ、年齢に伴う筋力の左右差や可動域の制限も確認されました。
■ 一時的な変化と、その限界
施術の直後に「ちょっと楽かも」とおっしゃったことが一度ありました。
それ以外は、はっきりとした変化を感じている様子ではありませんでした。
私の手には、筋肉のゆるみや呼吸の変化など、わずかながら反応は伝わってきました。
けれど、日常生活を変えるほどの実感には届いていなかったと思います。
■ よくなると思っていない空気を、どう扱うか
ご本人は、おそらく根本的に良くなることはないと感じていたように思います。
そして正直に言えば、私自身もこのケースで大きな変化を生むことは難しいと感じていました。
それでも、定期的に足を運んでくださることには意味があります。
それは希望というより、せめてこれ以上悪くしないように、という静かな意志のように感じられました。
■ 側弯症の体に手をかけるということ
側弯のある体は、安定しているようでいて、同時に崩れやすさも抱えています。
そのため、大きく変えることよりも、日々の中で整えていく視点が必要になります。
10回程度の施術のなかで、目に見える改善はほとんどありませんでした。
ただ、施術中に呼吸が通りやすくなったり、背中がすっと伸びるような感覚があったことは確かです。
■ 治すことだけが目的ではない
このケースは、いわゆる成功例ではありません。
それでも施術を重ねる意味はあったと感じています。
少しでも整った状態を体験すること
偏った動きの癖をやわらげ、大きな不調を防ぐこと
自分の体を見守られているという安心感を得ること
これらは、短期的な結果では測れない価値を持っていると思います。
■ 最後に
「よくなります」と言えるケースばかりではありません。
でも、だからこそ無理に期待を持たせず、今の体を丁寧に見つめることを大切にしています。
施術の直後だけでも、呼吸が深くなる、背中が軽く感じる、
そのような小さな変化があるなら、それは意味のある時間だと思っています。
劇的な変化を求めている方には物足りないかもしれませんが、
今の自分の体に不安がある方にとって、ここが安心して相談できる場になればと思っています。