側弯症が軽度にある女性20代

20代女性 腰痛・肩こり・全身疲労感

過去に側弯症と診断された既往あり


概要と来院時の主訴

20代の女性から、腰痛と肩こり、それに加えて「全身が常にだるい」という訴えがありました。

長時間のデスクワークを中心とした仕事に加えて、睡眠不足やストレスも重なり、回復する余裕がないまま働き続けているとのことでした。

学生時代に側弯症と診断されたことがあり、現在も体幹に軽度の左右差がみられました。

触診では、肩から腰にかけての緊張が強く、背中全体に力が入りやすい状態でした。


初回施術後の反応

初回の鍼施術では、肩甲骨周囲と背部から骨盤、下肢にかけての連動を意識して整えました。

施術直後に、腰の可動域が広がり、立ち姿が軽く変化した印象がありました。

本人からも、「あ、こんなに動くんだ」という言葉とともに、驚きと安堵が混ざったような表情が見られ、身体がしっかり反応していることが伝わってきました。


継続できない現実と症状の再発

ただし、仕事が非常に多忙で、通院の間隔が定まらず、一ヶ月以上空くこともありました。

その間に再び同じような症状が出現し、「またつらくなってきた」というかたちで再来されることが数回ありました。

施術のたびに体は明確に変化しており、本人も「やっぱり違いますね」と実感されていますが、状態を保つだけの余白が日常生活のなかに少ないようでした。


所見と考察

鍼灸による身体の反応は非常に良好で、回復の力がしっかり備わっている印象です。

しかしその変化が持続するためには、生活リズムや休息時間、睡眠の質、精神的なゆとりといった要素が一定以上必要になります。

この方のように、変化を起こす力があるにもかかわらず、それを支える環境が不足しているケースは少なくありません。

回復の足場が整わないため、施術後に一時的に軽くなっても、体がその状態を保てずにまたもとに戻ってしまうというサイクルに入りやすくなります。


今後に向けた提案

このような状態では、施術そのもの以上に、通える頻度や日常での過ごし方をどう作っていくかが重要になります。

施術のたびに明確な変化が起こるという事実は、大きな希望でもあります。

もし生活リズムがわずかでも整いはじめれば、その変化はより深く、長く持続する可能性があります。


まとめ

体は確かに変わろうとしている。

けれど、忙しさやストレスによって、それが追いつかないまま元に戻ってしまう。

そのくり返しのなかでも、来院のたびに手応えが感じられたこのケースは、

治療の意味をあらためて考えさせられるものでした。

「よくなるための方法」は見えているけれど、

「よくなるための時間」が足りない。

現代の働く世代にとって、それは特別な話ではないのかもしれません。