手や指の痺れに対する鍼灸
机の角に肘をぶつけたことがある方は分かると思いますが、小指と薬指の外側に痛みないししびれ感が一時的に発生します。
これは橈骨神経という腕の神経に物理的な衝撃が加わりその神経に沿って上記の症状が一時的に出たものです。
つまり手や指の感覚や運動は神経(橈骨神経、正中神経、尺骨神経)に支配されているということですね。この神経になんらかの要因が加わり通常の神経伝達ができなくなった場合、様々な疾患名がつくことになります。
- 手根管症候群
- 橈骨神経麻痺
- 正中神経麻痺
- 胸郭出口症候群
- 肘部管症候群
そして整形外科で治療が施されることになります。あなたはどのくらい改善したでしょうか?
- すっかり良くなった
- 少し良くなった
- あまり変わらない
それぞれあると思います。
症状名がついた疾患に鍼灸治療は有効か
では、これらの疾患名がついた場合に鍼灸の有効性はどうなのでしょうか?
20代女性で小指が痺れるという方がお見えになりました。
整形外科では頚椎ヘルニアと診断されているため、頚椎の神経の圧迫が引き金になっていることが強く考えられる例です。小指の知覚は正常ですが、痺れる感じがあるとのこと。
体を詳しく観察すると、首の凝り、肩の凝り、張りが強い印象がありました。
鍼灸治療の初めに腹部を観察し、皮膚に接触させる程度の鍼(無痛)をするのですが、腹部も非常に固く、圧痛部位も多くあったのが、鍼をした時点でその腹部の凝りは半減しました。そのときに「小指の痺れは今どうですか?」と伺ったところ、その時点痺れも半減していました。
続いてうつ伏せになっていただき、観察します。首、配分、ひざ関節、その裏側、などやはり全身が凝っていて硬い。
この硬さがなんとかなれば自ずと痺れは収まるだろう、その確信して鍼灸施術を行いました。
原因ではなく結果
初回の鍼灸施術直後の時点で痺れはほぼゼロという結果を得ることができました。ここで何が言いたいかというと、もちろん私の鍼灸が優れているということを言いたいのではありません。
頚椎ヘルニアと診断されたからその患部が原因なのだと思ってしまいますが、必ずしもそうでない場合もあるということをお伝えしたいのです。
しかし腹部と指の痺れに医学的な因果関係はありません。でも、なぜ変化(改善)したのでしょうか?
鍼灸をするためには体全身の状態を把握する必要がある
腹部の凝りは血流の滞りだと私の行なっている鍼灸(積聚治療)では考えるのですが、逆に言えばいかに血流を淀みなく全身を巡らせることができるか?が体の改善のキーであると考えています。
腹部は東洋的に全身の反映された部位だと考えます。だから腹部も全身なのだということもできます。というとは痛い部位、辛い部位、痺れる部位という患部を「原因」だと考えるのではなく「結果」であると考えることができます。
血流の滞りの結果として患部に自覚症状が出ていると。
だから西洋医学で与えられた診断名も重要ですが必ずしもそれは原因と考えなくてもいいということを意味しています。東洋的には血流の滞りの原因のことを精気の虚といい、一般的には冷え、自己治癒力の低下などと言います。(以下、冷え)
体を温めることが鍼灸の役割
この冷えを解消して、体を温める環境を整えること、これが鍼灸の役割です。そうすればあなたの体は自ずと患部に血流を流し修復されていくでしょう。
たとえば、あなたがお風呂に入って体が温まったときその症状は軽くなりませんか?
なるとしたら血行がよくなり、体が柔軟性を一時的に取り戻しているからです。
鍼灸治療が目指すのはお風呂に入らなくても、その辛い症状から遠ざけること。つまり体を温めて血流の良い状態を作り出すことなのです。当鍼灸院の鍼灸治療の鍼は痛くありませんので、どうぞご安心ください。